Samsungが2023年4月に発売したフラッグシップ、Galaxy S23 Ultraのカメラを徹底的に検証しました。
最初に結論。
このスマートフォンのカメラは、ほぼ全てにおいて最高峰の性能を有しています。
シングルオートフォーカスの速さ、写真の解像度、暗所におけるノイズ処理はもちろんのこと、純正カメラアプリでもマニュアル撮影に対応し、細かな設定ができるなど、死角はほぼ無いです。
唯一、テストの中で平均点を下回ったのは、前後への動きがある被写体に対するオートフォーカス、いわゆる動体AFです。
シングルオートフォーカスが他の追従を許さない圧倒的な早さで合焦する一方で、なぜか動体に対しては、ピントがなかなか合いません。
とはいえ、欠点としてはその一点のみですので、前後に動きにある被写体を撮影しない人にとって、Galaxy S23 Ultraは最高の選択肢になると思います。
それでは個別に見ていきましょう。
Galaxy S23 Ultraの基本スペック
機種 | Samsung Galaxy S23 Ultra | |
発売時期 | 2023年4月 | |
(標準広角) | 画角 | ?mm |
画素数 | 20000万画素 | |
F値 | F1.7 | |
センサーサイズ | 1/1.3型 | |
画素ピッチ | 0.6μm | |
備考 | 0 | |
超広角 | 画角 | 13mm |
画素数 | 1200万画素 | |
F値 | F2.2 | |
センサーサイズ | 1/2.55型 | |
画素ピッチ | 1.4μm | |
望遠 | 画角 | 70・230mm(推定) |
画素数 | 1000万画素 | |
F値 | F2.4・4.9 | |
センサーサイズ | 1/3.52型 | |
画素ピッチ | 1.12μm | |
インカメラ | 画角 | 26mm |
画素数 | 1200万画素 | |
F値 | F2.2 | |
センサーサイズ | 情報求む | |
画素ピッチ | 1900年1月 | |
最短撮影距離 | 広角 | 8cm |
超広角 | 2cm | |
望遠 | 20cm | |
超望遠 | 42cm |
機種名/機能 | Samsung Galaxy S23 Ultra |
保存アスペクト比 | 4:3、16:9、1:1、FULL |
タイマー | 2秒、5秒、10秒 |
マニュアル撮影 | ○(MF時ピーキング有) |
スローモーション | ○(広角レンズのみ) |
タイムラプス | ○(超望遠以外すべてのレンズ) |
ポートレートモード | ○(広角、望遠カメラ使用時のみ) |
パノラマ撮影 | ○(超広角、広角使用時のみ) |
ナイトモード | ○(すべてのレンズ) |
顔認識AF | ○ |
追尾オートフォーカス | ○ |
スマイルシャッター | × |
タッチシャッター | × |
トップショット(バースト撮影) | ○(すべてのレンズ) |
フラッシュ | ○ |
360度写真 | × |
RAW撮影 | ○ |
その他 | 50MP・200MPで保存可 |
テストチャート上の解像度
広角
超広角
望遠(光学3倍)
超望遠(光学10倍)
Galaxy S23 Ultraの解像力は、テスト時点(2023年7月)っでiPhone13 ProやPixel 7aと比べても明確に頭一つ抜けている感じで、超広角・広角・望遠の全てで最も良い結果となりました。
超望遠については流石にセンサーサイズの小ささや、レンズ設計に無理があるのか、他のレンズと比べるとかなり解像度が落ちます。あくまで超望遠は記録用のレンズとして考えておくのが良さそうです。
暗所画質
Galaxy S23 Ultraは暗所の画質も他の機種と比べて最も良いと思います。
特筆すべきは暗所で色の破綻がないことでしょうか。
基本的に暗所での撮影は、センサーの感度を上げて半ば強引に明るくなるよう調整されるため、色味が緑や黄色がかったりするなど、本来の色味が出ないことが多いです。
1インチセンサーを搭載している画質が売りのAQUOS R6ですら、暗所での高感度撮影は色味が崩れているので、Galaxy S23 Ultraはカメラハードとソフトのバランスがとても良いものなのかもしれません。
あえて気になる点があるとすれば、ナイトモードOFFの時でも明るさを持ち上げすぎかなと、個人的には思います。
実際はもっと暗いシーンでのテスト撮影だったため、現実に近い見た目で撮影したい派の人からすると、違和感があるかもしれません。
日中屋外での画質(ズーム倍率別)
日中屋外での画質はぶっちゃけどの端末でも非常に綺麗に写るため、Galaxy S23 Ultraが特別綺麗ということはないです。
しかし、ズームをした場合は、4眼カメラをもつGalaxy S23 Ultraは他の機種と比べて画質の劣化がかなり少なくなります。
作例をみても20倍ズームまではデジタルズームを使用していることがわからないくらい、画質は綺麗です。
色味に関しては、かなりソフトウェアの補正が強めに掛かっていると思います。
超広角0.5倍、広角1倍の写真を御覧いただきたいのですが、綺麗に真っ青な青空となっていますよね。実際はもう少し薄い青色なのですが、AI補正により映える写真に加工されてしまっています。
SNSに投稿する上では映える写真というのは重要ですが、「写真」としてみた場合は、現実と異なる色味とすることで、「作られた写真」感が強くなり、質感の低下を招きます。
僕個人としてはどちらかというと現実主義なので、あまり色味は補正してほしくないですね。
夜間屋外での画質(ズーム倍率別)
先程の暗所撮影における画質と同様、暗いシーンでの撮影にはやたらと強いGalaxy S23 Ultraです。
AIによる補正が非常に強く介入するため、ノイズの除去やディテールの処理によりきれいな写真が実現できています。
以前TwitterにGalaxy S23 Ultraのノイズ除去前後の写りを投稿したことがありますので、そちらを見ていただきたいのですが、Galaxy S23 Ultraの画質補正は、「補正」のレベルを遥かに超えた加工に近い調整がなされます。
【Galaxy S23 Ultraの100倍超解像ズーム】
ソフトウェア処理前後でこんなに変わる。 pic.twitter.com/KAYkmmIaQU
— 鬼のスマホカメラ研究ブログ「RubyLabo」管理人 (@rubylabomaster) May 10, 2023
ユーザー側としては補正の有無がどうであれ、綺麗な写真が撮れれば良いわけですから、AI補正が優秀であることは、喜ばしいことではありますが、過度な補正を嫌うユーザーも少なくないと思うので、今後はカメラ自体の基礎スペックを上げることできれいな写真を実現してもらえるとすばらしいですね。
最短撮影距離とマクロ撮影の画質
最短撮影距離 | 広角 | 8cm |
超広角 | 2cm | |
望遠 | 20cm | |
超望遠 | 42cm |
Galaxy S23 Ultraの最大の長所の一つとして、このマクロ性能が挙げられます。
メインとなる広角レンズでは被写体まで8cmまで近づくことができ、これはiPhone13 Proの15cmと比べても大きなアドバンテージと言えます。
また、望遠レンズについても極めて優秀で、被写体との距離が20cmからピントが合います。
同時期にテストしたiPhone13 Proの望遠レンズは最短撮影距離が50cm、Pixel6 Proが85cm(こちらは光学4倍ですが)となっていることからも、Galaxy S23 Ultraのマクロ性能がいかに高いかがわかります。
画質の綺麗さも折り紙付きです。
最短撮影距離はカメラの使い勝手を左右する非常に重要な要素です。
テーブルフォトを撮影する機会が多い方にとっては、このアドバンテージは何者にも代えがたいメリットだと思います。
シングルAF(顔認識)速度(明るい場所)
Galaxy S23 UltraのシングルAFは極めて優秀です。
テスト環境においては、被写体が静止する前からAFが作動し始め、被写体が止まった瞬間にピントが合いました。
撮りたい瞬間にすぐ撮影できるのは、スマホカメラとしては非常に重要な要素であり、使い勝手の向上に強く寄与します。
ピント精度も完璧で、もはや一切の不満もありません。
シングルAF(顔認識)速度(暗所)
暗所での撮影であっても、Galaxy S23 Ultraのオートフォーカス(顔認識)は比較的スムースに動作します。
単純なAF速度だけで言えば、Pixel 7aやPixel6 Proの方が高速に合焦しますが、ピント精度まで含めて考えると、僅かながらGalaxy S23 Ultraに軍配が上がります。
このテストは0.09ルクスという満月の月明かりよりも遥かに暗い環境で行っているなか、ここまでのピント精度が出せるのは流石に素晴らしいと言わざるを得ないですね。
ちなみに、一世代古いですが、ライバル(?)のiPhone13 Proはこの暗さだとピントが合いませんでした。
シングルAF(物体認識)速度(明るい場所)
顔認識によるAFと全く同レベルでオートフォーカスが作動します。極めて高速です。
顔認識オートフォーカスと普通の(物体)オートフォーカスでは、場合によっては顔認識AFの方が遅くなることがあります(その分ピント合わせは正確)が、Galaxy S23 Ultraの場合は顔の認識の有無を問わず、常に超高速でピントが合います。
シングルAF(物体認識)速度(暗所)
顔認識無しの場合もオートフォーカスは顔認識有りと全く変わりません。
しかし、Galaxy S23 Ultraは顔認識なしの場合、ピント精度が落ちるようで、ピントが抜けている写真が散見されます。
フォーカスしたい場所をタップするなどして、ピンポイントにフォーカスを合わせれば正確にピントが合うのですが、このテストのようにオートで撮影すると、ピント精度が落ちるといった具合です。
動体オートフォーカス性能
冒頭でも触れましたが、Galaxy S23 Ultra唯一の泣き所が動きモノの撮影です。
このテストの前段ではシャッターボタンをタップ連打してシングルAFによりピントを合わせているのですが、以下のサンプルをご覧の通り、ピント合わせに時間を取られ、さらにピント精度も微妙です。
特に被写体が近くなればなるほど、ピント精度が露骨に下がっていっていきます。
最近のハイエンド端末はまだしも、5〜6年前に販売されたような機種にも劣る場面が多いため、Galaxy S23 Ultraは動体撮影が明確に苦手と言えますね。
高速動体(シャッターボタン連打)
低速動体(シャッターボタン連打)
高速動体(シングルAF)
低速動体(シングルAF)
背景ボケ(ポートレートモード)
ポートレートモードでは、ピントを合わせたい被写体からの距離に応じてボケ処理がなされます。
前ボケ、後ボケどちらもきちんとカメラが認識し、適切なボケ量に処理されます。Pixel 7aのように背景ボケのコントロールが乱れるということはありません。
ただ、Galaxy S23 Ultraはメインの被写体と背景の分離がやや苦手です。
このように、背景に連続性がない場合に、背景として認識されなくなり、ボケ処理から外れます。
毎回必ず発生するわけでは有りませんが、iPhone13 Proではこのようなことはほぼ起きないので、今後の改善に期待したいところです。
手ぶれ補正
手ぶれ補正については、特筆すべき点はありません。普通に優秀です。iPhone13 ProやPixel 7aとほぼ同等の効果があります。
一つだけ、Galaxy S23 Ultraの手ぶれ補正は他端末よりも優れている点があります。
それは望遠カメラ使用時、フレーミング中の揺れがかなり小さいということです。
一眼レフの世界で言えば光学式手ぶれ補正と似たような効果があるということですね。
他のスマホはフレーミング中には手元の揺れなどが画面に直接反映されてしまい、狙いが定まりにくいのですが、Galaxy S23 Ultraはカメラを構えている時点で揺れが収まっているため、撮影しやすいです。
結果として出力される写真はGalaxy S23 UltraもiPhone13 Proもどちらも同じく手ブレは同程度補正されるのですが、撮影中の安定感は本端末の方が優れています。
美肌補正
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/120 sec, ISO250)
Galaxy S23 Ultraで人物を撮影した場合、肌の色味、質感については比較的大きく補正されます。
傾向としては肌を実際よりも明るく描写し、影となる部分も極力無くしてしまうイメージです。
Galaxy S23 Ultra自体、そもそもAI補正が強めなスマホですが、これは人肌についても同じですね。
個人的にはAI補正によって、写真の立体感が失われていると感じます。
これを良しとするかは撮影者の好みの話ですので、比較評価するようなことではありませんが、写真にリアルを求める人にとっては要らぬ補正と言えそうです。
動画におけるオートフォーカス追従性
なぜか、良い結果になりました。
先程触れた動体に対してのオートフォーカス(静止画)検証では、ピントが追いつかず、撮影のテンポもイマイチとGalaxy S23 Ultraとしてはほぼ唯一の弱点といえる動体へのAFですが、何故か動画撮影ではしっかりとピントが合います。
もっとも、他の端末と比較して特別性能が良いわけではないので、及第点という形にはなりますが、動画を多用する方にとっては嬉しい誤算です。
高速追従性
低速追従性
夜間の動画撮影における明るさ・手ぶれ補正・オートフォーカス比較
Galaxy S23 UltraのAI補正により写りは抜群に良いです。手ぶれ補正もかなり優秀です。
テスト撮影した場所は、実際はもっと暗く、左半分はほとんど真っ暗な道なのですが、補正によりかなり明るく写っているため、静止画同様にリアリティ重視の方には扱いにくいかもしれません。
Galaxy S23 Ultra全体として言える話ですが、記憶より記録を重視した方向性に振っている感がありますね。
メニュー画面
Galaxy S23 Ultraの作例
※画像クリックで拡大します。
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/690 sec, ISO10)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/250 sec, ISO10)
Galaxy S23 Ultra (7.9mm, f/2.4, 1/1050 sec, ISO50)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/2500 sec, ISO10)
Galaxy S23 Ultra (2.2mm, f/2.2, 1/3200 sec, ISO50)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/180 sec, ISO250)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/100 sec, ISO320)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/100 sec, ISO800)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/25 sec, ISO800)
Galaxy S23 Ultra (7.9mm, f/2.4, 1/30 sec, ISO1250)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/25 sec, ISO500)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/100 sec, ISO160)
Galaxy S23 Ultra (6.3mm, f/1.7, 1/8 sec, ISO2000)
まとめ
20万円もする超高級スマホ、Galaxy S23 Ultra。
今回僕はカメラ性能を試すために一時的に所有しましたが、もはや凡人には購入は叶わないくらい高額なスマートフォンです。
カメラの性能は価格だけあって基本的には非常に素晴らしいものがあります。
カメラの画質やシングルオートフォーカスの性能、マクロ性能など、ピンポイントの性能もさることながら、動作が軽快でかつ、やりたいことがほぼ意のままに、直感的に操作できる点においては、流石にハイエンドと言えます。
Pixel 7aやPixel6 Pro、AQUOS R6などもじっくり撮影する分には申し分ない性能を持っていますが、性能を引き出すための労力も含めて考えるとGalaxy S23 Ultraはやはり頭一つ以上抜けています。
要はじっくり集中して撮影しなくても、テキトーにカメラを構えてシャッターボタンを押すだけでいかなるシーンでもきれいな写真が撮れてしまうわけですね。
もちろん、しっかりと撮影したいときは純正カメラアプリのマニュアルモードを使って好みの画質に調整することも可能です。
とにかく気軽に最高レベルの性能を満喫できるのがGalaxy S23 Ultraというスマートフォンである・・・というのが僕の結論です。
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